シンガポールという国を知るのに最適な本「なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか」


5月に書いた【タイと比較したシンガポールの第一印象〜気候・生活・人々について〜】という記事の中で、ネットで見つけた本の抜粋記事がおもしろかったので読んでみたいと書きました。

一時帰国中に購入して読んだのですが、シンガポールに住みはじめて感じている疑問や、理解できない!と思ったことが腑に落ち、読めてよかった。

シンガポールに来たばかりでシンガポールの知識がほぼなかった私にとって有益な情報ばかりでした。思わず話したくなる興味深い話がたくさん!
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タイトル通りこの本では建国わずか40年ほどで日本のGDPを抜き、アジアでもっとも豊かになった国の内情を紐解く本となっています。

1章目は国の政策について、2章目はシンガポールにまつわるヨコの歴史、3章目にはシンガポールの今後の展望や抱える問題などについて書かれています。

世界史が好きなので読んでいて楽しかったのは2章目、3章目も現在の政府の苦労がみえておもしろいのですが、生活していく上でかなり参考になったのが1章目。ここでは1章目で書かれていた身近な話を中心に感想を書こうと思います。

独立に不安で泣き崩れる初代首相

まずはじめに、シンガポール建国の経緯について、恥ずかしながらこの本で初めて知りました。

衝撃だったのが、シンガポールが独立国家となったときの記者会見で不安からか首相が泣き崩れたということ。本の中で当時の映像がYouTubeにあると書かれていたので見てみると↓
泣き崩れた、というほどではなかったけれど、涙がこらえきれず、悔しげな表情。独立と聞くと喜びのイメージが強いですが、そんな気持ちは微塵も感じられませんでした。

この不安を本の中では、
技術がない
土地がない
食材がない
水がない
軍事力がない
人がいない
国民の連帯がない
の「ない×7乗」と表現しています。

独立当時は国民の数はたった200万人だったそう。今の岐阜県の人口と同じ!少ない!

さらに、周辺国の独立により欧米諸国との貿易量が激減して、中継貿易に依存していたシンガポールは大打撃。さらにさらに駐留していたイギリス軍の撤退で深刻な失業問題と問題山積みな中のスタート。

「人が資源」からくる熱心な教育

シンガポールの教育制度についてかなり詳しく書かれています。

ざっくりとは知っていたものの、制度を詳しく知ることで教育ママにならざるを得ない理由が知れたのは一番でかかったです。というのも幼稚園を探すときに少し苦労したから。

本の中で、
優秀な人材の輩出が国家の生命線と考え、教育を最重要課題としているシンガポールの政策では、小学校を卒業する時点でその後の人生が決まると言っても過言ではない。
とあるように、小学校卒業時にある学力テストがあり、この学力テストが山場。12歳で山場!

そのため、幼稚園からすでにすごいんです、教育が!熱心なところだと、年中さんから園庭は使わず座学のみ、卒園する頃には簡単な英語の本が読めてしまうほどになるといいます。

「ムリムリそんなのムリー!(私が)」と思ってシンガポールへ来たので、できるだけのびのびと楽しみながら学べるところを探しました。

たくさん傷をつくって自然の中で自由に育ってきた私にとって、シンガポールの教育制度は、「そんな小さい頃からストレスを与える必要はある?」「劣等感やプライドに苦しまないのか?」「豊かな個性が失われてしまわないのか?」という疑問でいっぱいでした。

それがこの小さな国が生き残りをかけて、優秀な人材を輩出し囲うために作りこまれた教育制度によるものだったことがわかり、いいかどうかは別にして理解することができました。

教育に対する国家予算の配分は日本の3倍以上で、国防予算並みだとか!

個人ごとの成績等のデータがかなり細かく政府によって管理されています。都市国家なので、政府に直結してしまうのは仕方ないのかもしれないけれど、完全に政府の監視下に置かれているのはやはり息苦しく思いました。

小学校卒業時のテストの話に戻りますが、このテストで2/3の比重が置かれているのは言語(英語)であることを知り、英語教育に関しては特に肯定的になったかも。

多国籍な人種が混ざり合って生活しているので共通言語として必須だし、大学進学時にも英語が話せるだけで、日本から海外へ行くよりはるかに軽々と羽ばたける。

実際買い物時におじちゃんおばちゃんと話すと、てきとうな英語ではあるものの英語での意思疎通が可能だし、小学生くらいの子だと本当に流暢な英語を話すのでびっくりする(尊敬の念)!

さらにインド系やマレー系であっても第二言語に中国語を選択する場合が多く、3ヶ国語が話せるのは一般的なんだとか。日本で3ヶ国語話せる人がいたら才児ですよね。

徹底した能力主義が採用されているため、家柄や人種に関係なく才能さえあればなんにだってなれるのはいい仕組みだなぁと。

資源について

100年先をガチで見据えた水源について

マレーシアから水を購入しているのは知っていたけれど、シンガポールの国土の半分以上が貯水区というのにはビックリ!マリーナベイを「湖?」なんて言ったりするけど、ここもまた貯水池だったなんて。

そんなシンガポールのランドマークであるマリーナベイですが、1970年代まではゴミまみれで悪臭もすごかったそう。約2億4千万円かけて実施された主要河川の一大清掃キャンペーンの存在を知ると観光名所がまた違った目線で楽しめる。

また、下水から作られるニューウォーターの話はシンガポールに住む人なら是非読んでほしいなと思う。

流しっぱなしにはせず、適切な量を使っていこうと決めました。

観光について

ないないづくしの環境で、何が何でも成功させなければならなかった観光業。

土地がなく観光資源のないシンガポールの自ら観光スポットを作り出すそのアイディアはすごい。近年では街中でF1レースが開催されたりカジノがオープンしたり。大規模事業を確実に成功させているのはさすがだなと。

またこれ以外にも、シンガポールの観光スポットについて歴史や背景をふまえて書かれているので、そんな意味があったの!?と驚く箇所も多かったです。

例えば今では一大テーマパークとなっているセントーサ島は、以前はイギリスの軍事要塞だったり。

旧タイガーバームガーデンは元々興味があったけど(ジョジョ第3部の香港編より)これを読んで絶対行きたくなった!

リー・クアンユー元首相について

「現代のシンガポールはリー・クアンユー氏の個人作品である」という岩崎育夫氏の言葉が引用されていましたが、必ず成功させなければならないという「執念」という言葉が印象的でした。

そして建国の父、リー・クアンユー元首相が2015年に亡くなっていたこともこの本で初めて知りました、、!(本当に何も知らなかった(^^;))

一党独裁のシンガポールを「明るい北朝鮮」と表現されることもありますが、下記の「開発独裁」という言葉を知り、シンガポールにとっては必要な選択肢だったのではと思いました。

参考URL:【シンガポールのことを、「明るい北朝鮮」というらしいですが、なぜですか?】

第2章について少し

第2章はシンガポールにまつわるヨコの歴史について書かれていましたが、アヘン戦争などの過去から現在建設中の貿易港の話まで、貿易の話がとにかくおもしろい。

スパイスを求めて欧米諸国が殺到した話なんかは、世界史を履修している受験生が読んだら頭に残るだろうな。当時のヨコの世界史が分かりやすくまとめられています。

トータル感想

優しい言葉で書かれていて、読みやすかったです。著書の峰山さんはシンガポール在住7年目の方。折々にでてくる例えがおもしろい。

何よりこの情報量を700円で読めてしまうのはお得すぎ。これからのシンガポール生活に大いに役立てていこうと思います。

本書の中では基本的にシンガポールを賞賛するスタイルでしたが、東京23区しかない土地でよくもここまで、と思う反面、東京23区ほどの広さ・人口500万人(東京23区の人口は約920万人/2016年の統計)の都市国家だからこそ成しえたことなのかなとも思います。

日本も大きな国ではないけれど、それぞれの県に歴史があり、文化があり、伝統がある。これも結果論で、今成功しているシンガポールを知っているから言えることではあるんですが。

植民地化解除間もない日本から多くを学んだ姿勢に習って、日本が見習うべきは、英語力と少子化対策だと思う。気合いのいれようが全っく違う。
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古いものや文化が好きな私にとってシンガポールは新しいものばかりで味気ないなというのが今の正直な感想ですが、国の成り立ちが知れたことで街の見方が変わりました。

シンガポールの「今」が知れる本でした!


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